良薬は苦すぎる・・・
粉の量が多いせいで強力な粘度をもった新処方のササスペですが、その味はどんなにハッピーな人間が口にしたとしてもその瞬間には一気にグロッキー状態にマインドシフトできるという効能を併せ持った「良薬らしい性質を持った良薬」といえるのではないでしょうか。
癌の治療を始めるときは既にササスペを飲み始めてから2ヶ月近くが経過していました。であるにもかかわらず、病状への効果を目に見えて体験できていなかった私たちにとっては、それは正に「試練の味」だったのです。
しかし、この2ヶ月で猫への薬と餌の給餌に自信をつけていた私は挑戦者の強い心が手に入っていました。
ある程度シリンジでの給餌には自信をつけていましたし、追加の錠剤を飲ませるのも上手くなっていました。
10月当初では40分から1時間かかっていたササスペ、薬タイムは、約5分にまで短縮できていたのです。様々な試行錯誤の結果、自分なりの楽なやり方を編み出すことに成功していたのです。
昔エジソンが言ったそうです。
「私には失敗がない。2万回の電球がつかないという経験があるだけだ。」
これが挑戦者がやがて成功するための思考法だと思います。
挑戦者の挑戦の仕方
玉砕してしまっては、取り返しの付かないことになります。
つまり、新処方のササスペはまずくなるという粗方の予想はついていたので、最初に半分だけ作ってみたのです。仮にまずくて使い物にならなかったとしてもあと半分は残っているから勝負できる。全部をムダにすることなく続けられる。
そして、女房に飲ませ、自分で味わった時に、「実際に半分が無駄になった確かな予感」を得てしまったのです。
案の定、餌に混ぜても全然食べない、スープに混ぜてもまずくて飲み込まず、すぐに吐き出してしまいます。
それならばまずは、「スープの量を増やす」ということから始めました。
何でも最初から来い濃度で与えれば抵抗が生じてしまうので、薄い味から少しずつ時間をかけて慣らしてゆけばよいのではないか。
案の定、新ササスペの味を薄くすれば飲んでくれます。ですが少しずつ新ササスペの濃度を濃くしてゆきながら、いつでも一定の濃度に達すると急に受け付けなくなります。するとひどい時にはそれまでお腹に入っていたものまで全てをリバースしてしまい、以降食事も取らなくなります。
それでは、苦味を消す方法はないものか。
猫に馴染みがなくても、人間がにがみを消すために料理で工夫していることはなにか。
チョコレートは甘みがありながらも苦味もあり、子供が食べても美味しい味だから、元々「苦味」と「甘み」とは相性の良いものかもしれない。
では、ハチミツたっぷりで甘い「猫用スイーツ」として提供したらいいんじゃないか。
女房に相談したら喜んで考えてくれると思ったのですが、そもそも普段お菓子作りなどしない人間なので、結構冷たく「はちみつでも混ぜれば」と言われただけで終わってしまいました。猫に甘いものを飲ませること自体に反対だったそうです。
それでも私は、そんな常識的なことを言っていたら絶対に猫を救えないと思ったので、「甘みをプラス」するという挑戦もしてみました。
はちみつには添加物が入っているような気がしていたので、コストコへ行って安いマヌカハニーを買って試してみました。
マヌカハニーもこれまた高価ですが、買っておけば人間の健康にも良い、という自分の中で言い訳をして買ってみました。
しかし、マヌカハニーの粘度もまた高く、ササスペを混ぜて牛乳で溶いたとしても結構な濃密なエッセンス同志がぶつかり合い、油絵が描けそうな色彩になりました。
恐る恐るトラに飲ませてみましたが、3滴くらいで逃げてしまいました。
しょうがないので牛乳の量を増やしたりして何度も試しましたが、量を飲ませるのがまた大変になってしまったのでした・・・
私があまりにも無理に飲ませようとするので女房が、もう無理に飲ませるのは止めて欲しいと懇願します。
また心が折れ始めてきました。
ですが、トラちゃんは鼻血が止まらず、クシャミの度に鮮血を噴射しています。
自分の中で何度も「一つのことを信じる」と念じていました。ですが、うまい解決方法が見つかりません。
それでも何度でも挑戦します。